はじめに

Authense弁理士法人からニュースレター第2号をお届けします。今回は、会社のブランディングに大きな影響を及ぼす社名変更に関連した話題を2件、取り上げました。

今月の内容

社名変更(商号変更)における商標の考え方

貴社の名前は設立時から変わりませんか?過去に社名を変更したことがあるでしょうか?

2023年10月は、LINEヤフー株式会社(旧:Zホールディングス株式会社)やTOPPANホールディングス株式会社(旧:凸版印刷株式会社)などの社名の変更がありました。 また、日立造船株式会社も2024年10月にカナデビア株式会社へと社名の変更を行うことを発表しています。日立造船は、既に日立グループから離れ、造船事業からも撤退しており、社名と事業が乖離している状況でした。今回「日立」も「造船」もなくした、新しい名称「カナデビア」を採用しています。

ビジネスの成長や変化に伴って、社名の変更が必要になることがあります。社名の変更は、会社の新しいアイデンティティを示し、ブランドの再構築や拡大を目指す重要なステップとなります。今回は、社名変更において商標の取り扱いのポイントをご紹介します。

1.社名検討段階での商標調査

まず新しい社名を検討する段階で、候補の社名が他者の商標権を侵害する恐れがないかどうか、調査を行うことが重要です。

社名を決めて、ロゴやウェブサイトなどの準備も行った後に、最終段階であわてて商標調査を行う、といったことは危険です。その社名と同じ登録商標が見つかった場合、一から作業のやり直しとなってしまいます。 また商標調査を行わず、他者の登録商標と同じ社名に変更してしまった、という場合には、商標権侵害の問題が起こるリスクがあります。

なお商標法では商標権の効力の除外規定があり、『自己の会社名と同一の登録商標があった場合でも、自己の会社名を示すものとして使用する範囲においては、商標権侵害にはなりません』*とされています(*出典:特許庁「商標権の効力」)。

しかし上記の通り、除外されるのは『自己の会社名を示すものとして使用する範囲』に限られますので、例えば商品やサービスの広告宣伝に用いる場合などは使用ができず、社名が使いにくくなってしまいます。 また上記の除外範囲から外れて、商標権の侵害に該当する行為をすると、社名の使用の差し止めや損害賠償を請求される恐れもあります。